ホテルを8時に出る。
空港までの移動手段はエジプトで覚えたてのウーバーを利用。スマホで迎車を依頼すると、10分も待たずにやって来た。9時にはジョン・F・ケネディ国際空港の、小さな第7ターミナルに到着。
チェック・インし、座席も希望の場所にしてくれたが、片方の荷物が重いから分散してくれと言われる。どうせ2つ預けるのだから問題ないと思うのだがなあ。
免税店も少なく、気の利いたお土産もない。皆のお土産は空港で買おうと思っていたのに、何にしようか悩む。
帰国便は久々の日系の国際線。
機体はB777-300。成田からカイロに向かった便と同タイプなのだが、全日空は新品の様にキレイだ。タッチ・パネルの感度も良いし、エンターテインメントも充実している。
最初の機内食はシュリンプのカレー、サラダ、ほうれん草のごま和えにお決まりのそうめん。更にハーゲンダッツのアイス・クリーム。どこかの機内食と違い、どれも抵抗なく食べられる。
ニューヨークから成田までは北アメリカ大陸と太平洋を横断していくのかと思いきや北西に飛び、カムチャッカ半島辺りを南下する。それが最短ルートなのだろう。
飛行時間約14時間。日付変更線も初めて越えた世界1周の旅を終え、成田空港に到着した。
どうにかこうにかエジプト、アメリカ東海岸の旅『摩天楼と砂漠の中のオベリスク』を終えることができた。
今年の旅は準備からてんやわんやで、しかもコロナ・ウィルスの騒ぎが始まっていた。旅の準備は楽しみながらやっているのだが、ウィルスは自分にはどうすることできない。気を付けて過ごし、静観するしかない。
その頃、エジプト国内では感染者は中国人1人ということだった。
一方、アメリカではコロナよりもインフルエンザの方が猛威を振るっていたが、空港も観光地も賑わっていた。帰国後エジプトもアメリカ、そして世界中がコロナ・ウィルスでとんでもないこととなってしまうとは、この時は想像もしなかった。
旅行中、エジプト人のガキ共から「コロナ、コロナ」と揶揄されることもあったが、それはまだ冗談で済まされている程度で、脅威に思うことはなかった。
しかしその後、本格的にアジア人へ対する差別が頻発し、身の危険を感じることもあった。
ニューヨーク滞在中に、公共施設が閉鎖されはじめ、徐々に店なども閉まり、段々に確実にゴースト・タウン化していった。
アラメインで泊まった時に感じたように、自分は最後の最後のお客として旅をしているような気がしてきたものだった。
この旅はまるで、長い付き合いの友人が「今来い!」と導いてくれたかのようなタイミングだった。
久々のエジプト航空でエジプトを訪れ、いつもの仲間に再会し名所を巡り、人にも場所にも「ただいま」と言うことができた。オベリスクが立ち並ぶタニスや念願の屈折ピラミッド入場、濃い内容のわりにのんびりとした前半となった。
しかし、その後まもなく エジプトは航空機の離発着禁止、遺跡の閉鎖の措置などが行われ、観光に大きく依存する経済は大打撃を受けることとなってゆく。
医療体制も万全でないエジプトでは日々千数百人の感染者が出ていた。いよいよ開館という大エジプト博物館も1年先送りとなった。それも1年後にコロナ・ウィルスが収束していればの話しである。
こればかりは誰にも判らないが、仲間たちが感染しないよう、油断しないよう、願うばかりだ。
一方、後半はニューヨークなど東海岸の旅だった。
当初は初めてのアメリカということで、不安で一杯だったが、終わってみれば居心地が良く、一人でも観光しやすく、困ることと言えば一人での食事くらいだった。(一人だとどうしてもサンドイッチやハンバーガー系に偏ってしまう)
初日に訪れたきらびやかなタイムズ・スクエアを見て、パリやロンドン、そして東京でもなく、世界の中心はニューヨークだと実感した。
アメリカの本題は古代エジプトのコレクションを見ることだった。ブルックリン美術館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館、ペンシルヴァニア大学考古学人類学博物館、そしてセントラル・パークのオベリスクを巡ることができ、有意義なものとなった。中でもメトロポリタン美術館は度肝を抜かれた。古代エジプト・コレクションだけでさえ、とても全て見切れなかった。
いつかまた訪れようと心に決めたのだが、同時にアメリカでも追いたてられるようにコロナ・ウィルスが広がり、完全に呑み込まれていった。帰国後に人影のないタイムズ・スクエアを日本のニュースで見て、ぞっとしたものだった。
イラク戦争、SARS時にもエジプトを旅したが、こんな事態は初めてだった。
一刻も早く世界がコロナ・ウィルスを制圧し平常を取り戻してもらいたい。
エジプトとアメリカ、二つの国を旅するにあたり、準備段階から帰国まで、多くの方々にお世話になった。アメリカではKちゃんが自分のわがままに付き合ってくれた。もしKちゃんがアメリカで暮らしていなかったら、来ることはなかったかもしれない。いつも思い通りの旅ができるのは彼らの協力あってこそだと思っている。ありがとうございました。
行けなかった場所はあるし、会えなかった友もいるが、今回の『摩天楼と砂漠の中のオベリスク』をひとまず完結することができた。
次はどこ行こう?世界が秩序を取り戻す頃に。
2020年2月23日~3月10日
最近のコメント